仙台の老舗、
時計と宝石の三原堂さんが閉店しました。
先月の末、まだ電池があるものの閉店前に交換してもらおうと
仕事用のストップウォッチを持ち込むと
修理の工房を立ち上げます、と教えてくださいました。
店員さんの前で、わ、よかった!!と声をあげてしまうほど、
とても嬉しい知らせでした。
このストップウォッチは3代目なのですが
以前使っていたのは、先輩の形見として
ご家族からいただいたものでした。
電池がなくなって三原堂さんに持ち込むと
あとから電話がかかってきたことがあります。
"電池交換する時に、貼ってあるシールが
剥がれてしまうのですが、
先ほどお渡しいただいた時、
大切なものかと思いまして..."
すごいなぁと思いました。
おっちょこちょいで物をよく落とす私が
このストップウォッチは大切に扱っていることを
手渡すたった数秒のうちに見抜いたのでしょうか。
結局、先輩が貼ったシールを剥がしたくなくて
そのストップウォッチに新しい電池を入れるのは
やめて、今の3代目を購入したのでした。
その出来事以来よりいっそう、
そしてこの先ずっと三原堂さんにお世話になろうと
決めていました。お願いするのが申し訳ないような
少額の、ちょっとした修理でもいつも
新品のようにピッカピカになって返ってきました。
3年前の3月16日の地震で腕時計の上に物が落ち、
ベルトの金具が曲がってしまった時がありました。
引き取りにいくと
"お怪我ありませんでしたか"という言葉とともに
お代は結構です、と代金を受け取ってもらえなかったことも
思い出します。寝不足の体に染み渡るような優しさでした。
時計って、持ち主にとってはそれぞれに思いのある
アイテムであることも多いですよね。
職人さんにとってはたくさんのうちのひとつ、なはずですが、
それぞれの物語を刻む時計を
分け隔てなく丁寧にお仕事されてきたのだと思います。
新たな修理工房は「時の蔵」という名前だそうです。
今度お願いする時には、名前の由来を聞いてみようと思います。