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手渡すもの

朝ドラ「スカーレット」の中で、
イッセー尾形さん演じる芸術家で
主人公の絵付けの先生のセリフが印象に残りました。

先生には、貧乏だった子供のころ、
どこも欠けていない茶碗に白いご飯の絵を描き
お母さんを喜ばせ、
お父さんのために夏の海の絵を描いたという原体験が。
その時、両親が「えーよー」と言ってくれたのが嬉しくて
日本画家として名を馳せても
日本の美しい風景画をにこにこ笑いながら描いていたのです。

ところが戦争が始まって、従軍画家として戦地へ赴き、
兵隊さんが敵に立ち向かう勇ましい姿を描くことに従事。

そんな経験を経て、戦争がおわっても、
もう以前のような絵は描けないと
他の仕事を転々としている中で出会ったのが
"絵が描かれた火鉢"。
暖をとるためには絵柄はいらないけれど、
その火鉢に綺麗な絵がかいてある。
"なんと贅沢なことを日本は楽しむようになったんだ
それが戦争が終わったということなんだな"と先生は思います。

それから、絵が描けるということはなんと幸せなことだろうと
思い、仕事で絵を描いているときも
嬉しくてたまらなくて、だから、笑いながら描いてしまう。

朝から引き込まれた長セリフでした。

ポランの看板 (1).jpg

先日、仙台朝市の近くで30年余り親しまれた本屋さん
「こどものほんのみせ ポラン」が東仙台に移転したというので
取材をさせていただきました。

前のお店は床から天井まで本棚、というお店であり、
大人一人がすれ違うのもやっとという空間でした。
それはそれで、本の中に飛び込んだような気持ちになれて
とっても好きでしたが、
今度は、昭和の雰囲気そのままの、かつて商店だった場所で
あらたな船出です。

小上がりもあって、自由に本を広げてみることができます。
赤いエプロン姿で迎えてくださった
店主の増田家次子さんもお元気でした。
外国の本を選べるのも、平和な時代だからよね。
終戦の時に10歳だったという増田さんの言葉です。

うつくしいものを、うつくしい物語を、
手渡せる時代に生きること。
クリスマスに向けて、あたたかな贈り物を探すならば。

ポラン新しい店舗 (1).jpg

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2019年11月15日 23:48に投稿されたエントリーのページです。

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