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祈り

震災から4年目の3月11日を迎えました。

今朝も雪がちらついて
あの日の雪を思い出します。
今日はとても一日が長く感じられます。

あの日、ここまでするのか、と思った景色。
確実に変化はしてきているけれど
やはり毎回沿岸部に足を運ぶと、
思い出の中にある景色と重ねては
愕然としてしまう自分もいます。
地球にとってのごくごく短い時間と
人間にとっての必死な長い時間を思います。

大型トラックが行き交う海への道路は
タイヤで削られ、砂埃が舞っていて
復興への道のりの険しさを思わずに
いられませんが、でも、これは前に
進んでいるからこその景色なのだと思います。

一方で、いまだ安心できる住まいが
遠くにある人もいます。
災害公営住宅の建設自体が4年経っても
これだけ進んでいないとは思っていなかったのが本音です。
全国でおよそ23万人が避難生活をしていて
まだ仮設住宅に8万人が暮らしているというのに
風化するには早すぎます。
さらに、経済的事情や新たなコミュニティーへの不安など
さまざまな事情で災害公営住宅への転居をためらう
方もいると聞きますし、こればかりは
ひとそれぞれの暮らしがあるので
一筋縄ではいかないのが現状だと思います。
阪神淡路大震災の後と同じく
災害公営住宅の高齢化が進むことで
どうやって見守る体制をとるかということも
話し合われています。

4年を思い返した時に
取材を通して、一番聞いた言葉は何だろうと
考えます。たぶんそれは
”生かされたからね”という言葉だと思います。

自らの生きる糧としてだけでなく
使命を感じながらその場で何かに取り組む人たちに
たくさんお会いしました。苦しい中で私にいろいろなことを
教えてくださった方や、お話をしてくださった
方々を尊敬しています。
その時に出逢った笑顔や涙を一生忘れることはありません。

先日、名取市閖上のメイプル館で
「本日は憩いのひと時を過ごす場として
ゆりあげ港朝市を選んで頂きありがとうございます。」
という貼り紙を見つけました。
ふるさとで立ち上がった人たちは
自分のたいせつな場所を訪れてくれるひとたちを
精一杯のおもてなし精神で迎えてくれます。

震災は、大きすぎる出来事だったけれど
あの後の経験が教えてくれたこともありました。

震災の後、それまで当たり前にあったものが
どれだけ豊かなものだったか知りました。
復活した景色、施設、地域のお祭り、四季それぞれの集い、
食べなれた地元の味に再会するたびに、愛おしさ100万倍です。

そして震災後、友達の力強さを知る事もできました。
あんなに大変な日々で、家族と連絡が
とれない中でもユーモアを忘れなかった友、
子どもを守るために奔走した友、
自分のほうが大変なのに、私を励ましてくれた友、
不安なはずなのに遠くからふるさとを想って動いてくれた友。
どんな時でもそばにいてくれた友達を
大切にしなくてはと思います。

そして東北に心を寄せてくれた人たちの中にも
新しい友達ができました。

その中の一人、
大阪はFM802のDJ加藤真樹子ちゃん。
2年前、東北を自分の目で見たいと
やってきた彼女。まきちゃんが
バスツアーに参加したという夜
初めてライブハウスで出逢いました。
とてもキュートなまきちゃんですが、
その日は沿岸部に気持ちを置いてきたような
表情をしていました。彼女をご飯に誘って
いろいろ話しました。その後も交流が続いて
”教えてくれてありがとう”と、いつも
言ってくれているのだけれど
迷いながら、あれでよかったのか後悔して眠れなくなったり
しながら番組をつくる時間が続いていた
私にとって、同じ仕事をしている彼女に
話をしていることでたくさん救われていました。

今日、彼女の番組に電話で出演させて
もらいました。阪神淡路大震災を乗り越えられた方々の
経験値にもわたしたちは助けていただきました。

今度はわたしたちが自分たちの経験をどうやって
伝えて行くか、取り組みが進んでいます。
14日からの仙台での国連防災世界会議はその大きな前向きな動きですが、
同時に各地で進む震災遺構についての議論も深い意味をもつと思います。
なぜなら、他の減災・防災にまつわる議論と違って
震災遺構の問題は心の復興という最も重い課題と
直結しているからです。こればかりは時間をかけなくては
なりません。

たいせつな人を突然亡くした方にとって
4年という時間は悲しみを癒すために十分な
時間ではありません。
でも、いまだ苦しい思いをされている方が
ふと顔をあげたとき、そこには、その方を想う友達が
いることに気付くことができますように。

謹んで東日本大震災でお亡くなりになった方々の
ご冥福をお祈りいたします。

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2015年3月11日 15:00に投稿されたエントリーのページです。

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